申請に必要な営業所の詳しい条件や、具体的な物件の可否がわからない。
管理者を選出するときの注意点や、どのような人が向いているのかがよくわからない。
古物商申請をすると決めたら、準備しなければならないことがいろいろ出てきます。
その中でも環境や人員などの準備は、思ったより時間がかかる場合もあります。
今回は、そんな可能性のある「営業所」や「管理者」について詳しく解説してまいります。
1.営業所とはなにか
古物商を営む場合に「営業所」とよばれる拠点を設置することと定められています。
この拠点とは、古物の「売買」、「交換」、「レンタル」を行う場所を指しています。
WEBショップやメルカリなど、インターネットで事業が完結する場合も事務作業を行う拠点として登録が必要です。
営業所の条件
営業所として登録できる場所は、住所とスペースさえあればよいというわけではありません。
審査にはいくつかの条件があるので、内容と具体例を交えて解説してまいります。
使用権原:事業用として使用する権利を有しているか
営業所とする物件を事業用として継続的に使用できる権利を持っている必要があります。
物件タイプ | 営業所 | 備考 |
---|---|---|
自社ビル 一軒家の持ち家 | 〇 | 自己所有の物件であれば正当な権原(権利)あるとみなされます。 |
賃貸借物件 分譲マンション | △ | 賃貸借契約や管理規約上で居住目的専用とされている場合には使用許諾書が必要な場合があります。 |
使用許諾書は地域により警察署へ提出の必要がない場合もありますが、住民トラブルを避ける為にも貸主や管理組合から承諾を得ておくほうがよいでしょう。
独立性:他の事業と区分されているか
営業所として使用する物件の設備構造が独立していて、商談内容や帳簿の個人情報等を保護できる必要があります。
物件タイプ | 営業所 | 備考 |
---|---|---|
レンタルオフィス | △ | 専用の個室ブースなど占有スペースが契約できれば問題ありませんが、共有やパーテーションで区切られているだけスペースの契約では独立性なしと判断されます。 |
シェアオフィス | × | こちらもスペースを共有しているとみなされ独立性がないと判断されます。 |
居住している自宅 | 〇 | 自宅の一室を営業所とする場合は生活空間と共有しますが、構造上は独立しているので問題はありません。 |
実在性:業務を行える場所が実際に存在しているか
これは古物営業法で定められている警察職員による立入り検査に対応する必要があるからです。
物件タイプ | 営業所 | 備考 |
---|---|---|
バーチャルオフィス | × | 住所や電話のみの貸出しなので実体がないと判断されます。 |
【番外】立入り検査ってどんな時にある?
営業所の義務
営業所には「管理者の常駐」、「古物台帳の備え付け」、「古物商プレートの提示」が義務付けられています。管理者以外は申請時に必要な項目ではないので、別の回で解説させていただきます。
このように営業所にはいくつかの基準や条件があるので、事前に確認して決定する必要があり、不備があると受理されません。
こちらも迷われる項目があれば、担当の警察署や専門家に相談したほうがよいでしょう。
2.管理者について
古物営業における管理者とは、一言でいうならば営業所の責任者です。
この管理者は、個人事業主で自宅兼営業所の場合、古物商と兼ねることができるので、申請時は欠格要件を重点的に見ていけばよいでしょう。
また、個人事業主でも管理者を別に選任する場合や法人は、営業所ごとの選任が必要になりますので、確認すべき項目と申請書類が増えてきます。
それでは具体的に管理者について解説いたします。
管理者の条件や責任
欠格要件に該当しないこと
前回解説の欠格要件に該当していないこと
管理者の全員が欠格要件に該当しない必要があります。
これは営業所への常駐性も含んでおり、複数の営業所で管理者を兼任できません。
ただし営業所が隣接してるときは兼任できる場合もあります。
取り扱う古物につき、必要な知識、技術又は経験があること
盗品売買を防止するため、一定の知識や経験があることが望ましい
一定の知識や経験は明確な基準はありません。
また努力義務なので申請時に証明する必要もありません。
扱う品目によっては申請時に警察署の担当者から質問をされることがあります。
特に被害金額の大きくなる自動車やバイク、時計・宝飾品類などは一定の知識、経験を有するべきといえます。
古物売買について管理し、従業者を指導監督できること
盗品売買を防止するため、古物台帳を管理し、従業員の指導と監督を行う
こちらも申請時に証明する必要はない項目ですが、制度の目的を守るために実務では必要です。
古物台帳とは仕入れた古物の特徴、値段、取引相手の氏名や住所などの帳簿であり、記入が義務付けられています。
事業主と管理者が雇用関係にあること
古物商許可を持たない者を管理者とするときは雇用関係が必要
法人や個人事業主でも別に管理者を選任する場合は、原則その管理者と業務委託契約ではなく雇用契約が必要です。
これは「委託を受けて売買する」場合も古物商許可が必要とされているからです。
委託先に古物商許可があれば問題とならない可能性もあるので、契約前に専門家に相談されることをお勧めします。
使用許諾書の取得で悩まれたり、管理人選任に不安がある場合は、ぜひ弊所へお問い合わせください。
➡行政書士西村東介事務所
3.まとめ
第三回では、営業所と管理者について解説いたしました。
どちらも申請には必須ですが、状況により準備の大変さは変わってくるかと思われます。
自宅開業の個人事業主の場合は、法人や管理者を別途選任する場合に比べて、申請時にはあまり意識しない項目かもしれません。
- 古物商許可申請には、取引や事務の拠点となる営業所を準備しなければならない
- 営業所は、使用する権利や独立性を持った実際のスペースが必要
- 営業所は、管理者の常駐が必要
- 管理者は、欠格要件に該当してはならない
- 管理者は、取扱品目の知識・経験を有し、指導監督能力が要求される
- 管理者は、原則雇用関係が必要
次回は具体的な申請手続きの準備として、必要書類の概要とその集め方などを解説いたします。